上海万博インフラ
上海市はリニア反対住民運動にどう対処する?
年明け早々、上海市中心部でリニアモーターカーの延長計画に反対する住民によるデモが発生した。住民は口々に、騒音や磁気による健康被害への恐れを訴えており、市当局も対応に追われている。着工が遅れれば、2010年の上海万博開催までに完成が間に合わない恐れも出てきた。
住民のデモは1月12日、13日の両日にわたって行われた。住民らは上海市政府庁舎前に集まってデモを開始し、警察に規制されると繁華街の南京路にまで流れ込んでいった。ピーク時には数千人に膨れ上がったとみられる。流血の事態には至らなかったものの、数十人の住民が拘束された模様。これほどの規模のデモが上海で起こったのは、2005年の反日デモ以来である。
上海ではすでに2002年末から浦東国際空港と上海市内(龍陽路駅。写真)を結ぶ約29.8キロのリニアモーターカーが運行を開始している。さらに2006年3月には、2010年の上海万博までにこの既存路線を杭州まで延長する新計画が政府の承認を得て動き出した。全長約175キロで、総工費は350億元。その後、上海の二つの空港を結ぶために、虹橋空港へ支線を伸ばす計画も追加された。
◆騒音や磁気による健康被害の恐れ
◆修正案では一部区間をトンネル化したが
しかし路線変更で新たに自宅近くをリニアモーターカーが通過することになった住民は黙っていられない。ある住民は「自宅からわずか30メートルのところを通過するとは思ってもいなかった」と憤慨。さらに修正案の「公示」の仕方が、あまり知られていないホームページ上だったことも、住民達の怒りに油を注いだ。もちろん、事前の説明などは一切なかった。
あわてた上海市は急遽、建設予定地付近のあちこちに住民からの苦情や意見の「承り場所」を設け、集めた意見を検討する専門家チームも立ち上げた。住民達もとりあえずデモは取りやめとし、意見書提出に作戦を切り替えた。上海市は出された意見書の検討結果を公表し、さらに住民の意見を求めると言うが、さて住民の不満をどこまで解消できるかどうか。
◆22.5メートルの安全地帯設定に不満の声
最も不満の大きいのは、路線周辺の安全地帯を幅22.5メートルに設定していることだ。22.5メートル以内に住んでいる住民は移転を補償するが、住民達は「それでは不十分。ドイツでは両側に300メートルずつの緑地帯を設けて、安全に十分配慮しているではないか」などと批判している。人体の影響へどの程度の影響があるのか、具体的な試験データが公表されていないことへの不満も大きい。
上海市も既に運行中の路線では、25メートルの安全地帯、その外側にさらに50メートルの防護帯を設けるなど、十分な措置を取った。しかし、市内の密集地では十分な安全地帯や防護帯を設けるのは簡単ではない。しかも安全地帯や防護帯を拡大すれば、その分だけ移転の補償費用が高くついてしまう。
すでに1年あまりも着工が遅れてしまっており、2010年の上海万博までに残された時間もそれほど長くはない。従来ならば強引に着工を決めたであろうが、住民も権利意識や環境保護意識の高まりによって、以前のように泣き寝入りはしなくなってきた。それだけに上海市としてもあまり強引に着工を急ぐわけにも行かない。上海市の対応は、今後の地域行政のモデルともなるだけに、大いに注目されよう。
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